愛知県江南市で、日々美しい花々を取り扱い、地域の暮らしに彩りを添えている花屋の経営者の皆様へ。
総務省統計局「令和6年経済センサス‐基礎調査」確報(雇用者のいない個人経営の事業所を除く)によると、江南市には2,770の事業所が存在します。その中に、皆様が営む花屋も含まれています。仕入れのために早朝から市場へ足を運び、戻ってからは冷水での水揚げ作業、棘(とげ)取り、そして店頭での接客や花束の制作、配達の準備など、花屋の仕事は想像以上に体力を使い、細やかな気配りが求められる現場です。
こうした日々の忙しさの中で、「AI(人工知能)」という言葉を耳にしても、自分の店には関係のない遠い世界の技術だと感じてしまうのは、ごく自然なことです。実際に、多くの中小企業が同じように感じています。
中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月・有効回答1,668社)によると、中小企業のAI導入率は20.4%(全社的3.6%+一部業務16.8%)にとどまっています。さらに、「導入予定はない」と回答した割合は61.0%にのぼります。
同調査において、導入に踏み切れない理由として「現状で満足しており必要性を感じない」と答えた割合は、導入予定なし層で27.7%、検討中層で4.0%でした。毎日、目の前の仕事が回っており、花を愛するお客様が来店してくださっている現状があれば、わざわざ新しい技術を取り入れる必要性を感じないのも不思議ではありません。
しかし、もし「今のままでいい」と思いつつも、どこかで「世の中の流れに遅れてしまうのではないか」という微かな不安を感じているとしたら、その原因は技術そのものへの抵抗感ではなく、別のところにあるのかもしれません。
総務省「令和7年版 情報通信白書」(図表I-1-2-15・日本 n=515)によると、「効果的な活用方法がわからない」と回答した割合は、米国が9.7%であるのに対し、日本は30.1%に達しています。この数字は、多くの経営者が「AIをどう使えば自分の仕事が楽になるのか、あるいは売上につながるのか」という具体的なイメージを持てずに立ち止まっている現状を示しています。
では、なぜ効果的な活用方法が見えてこないのでしょうか。それは、スマートフォンに新しいアプリを入れるような感覚で、「どのAIを使えばいいのか」という道具選びから始めてしまっているからです。
AI導入の「順番」とは
AI導入の「順番」とは、新しいシステムやツールを調べる前に、自店が大切にしているこだわりや、日々無意識に行っている判断基準を「言葉」として整理することです。
花屋の仕事には、マニュアルにしにくい職人技や感覚が溢れています。例えば、お見舞い用の花束を作る際、どのような色合いを避けて、どのような優しい色調を選ぶのか。あるいは、店頭の黒板に書く季節の挨拶文に、どのような温かみのある言葉を添えるのか。これらはすべて、経営者やスタッフの皆様が長年の経験を通じて培ってきた「言葉にされていない基準」に基づいています。
この基準を整理しないまま、流行りのAIツールを導入しても、返ってくるのはどこかで見たような、ありきたりで冷たい文章や提案ばかりになってしまいます。結果として「うちの店には使えない」と判断し、元のやり方に戻ってしまうのです。道具を手に入れる前に、まず自分たちの頭の中にある知識を言葉にする。この順番を守ることが、最初の一歩となります。
私自身も、かつて同じような壁にぶつかった経験があります。
一人で考え続けた末に、AIを相棒として相談しはじめた。答えを出してもらうのではなく、自分の店だけが持つ強みを一つずつ言語化していった。ランウィズは、その個人的な記録から始まった。
(公式HP「はじめに」より)
AIは、優れた電卓のようなものです。こちらが明確な数値や条件という指示を与えなければ、正しい答えを出してくれません。お店の強みや、お客様に支持されている理由という、数字に代わる「言葉」を、まずは経営者自身が自覚し、整理していく必要があります。
一宮からおよそ20km圏の29市町村の店舗を訪問し、AI導入の伴走をさせていただく中での私の姿勢も、この「順番」を何よりも重んじています。
お店の業種を私が覚えるのではありません。効く勘所だけを抜き出して、積み上げていきます。「教えてください」とは言わない。あなたの現場知識と、私のAI。掛け合わせて、あなたの店だけの仕組みをつくります。
(代表 佐藤の考え)
江南市の花屋の皆様が、今日からできることは非常にシンプルです。高価なソフトウェアを購入する必要も、パソコンの専門知識を学ぶ必要もありません。
今日、お店の営業が終わった後、あるいは仕入れの合間の静かな時間に、ノートを1枚用意して、次の問いに対する答えを1行だけ書き出してみてください。
「なぜ、私はこの花を仕入れたのか」 「うちの店に来るお客様は、どんな瞬間に一番喜んでくださるか」
例えば、「今週は少し肌寒い日が続くから、見ているだけで気持ちが温かくなるような、深いオレンジ色のガーベラを仕入れた。この温かみをお客様に伝えたい」といった、普段は言葉にせず頭の中で処理している思いを、そのまま書き留めるのです。
この「1行のメモ」こそが、将来的にAIを稼働させるための最も重要な燃料になります。この燃料さえ用意できれば、例えば、店頭のPOPに添える短い紹介文や、母の日の予約を促すSNSの投稿文を、皆様の思いがしっかりと宿った温度感のある言葉でAIが下書きしてくれるようになります。
最先端のIT用語を覚える必要はありません。まずは、ご自身の頭の中にある「花へのこだわり」を言葉にしてみる。その順番を意識することから、始めてみてはいかがでしょうか。
出典
本文中の数字は、次の公的統計にもとづいています。
- 総務省統計局「令和6年経済センサス‐基礎調査」確報(雇用者のいない個人経営の事業所を除く)
www.stat.go.jp で見る - 中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月(有効回答1,668社)
www.smrj.go.jp の報告書(PDF) - 総務省「令和7年版 情報通信白書」図表I-1-2-15(日本 n=515)
www.soumu.go.jp で見る