愛知県春日井市で6年間にわたりカーリース店を経営し、現在は春日井市をはじめとする一宮からおよそ20km圏の29市町村の地元の店舗を回り、AI導入の伴走支援を行っている経営者です。同じ地域で、日々美しい花々を通してお客様に笑顔を届けている花屋の経営者の皆様に向けて、この記事を書いています。
総務省統計局「令和6年経済センサス‐基礎調査」確報(雇用者のいない個人経営の事業所を除く)によると、私たちの商いの舞台である春日井市には9,833の事業所が存在します。その中で、仕入れから水揚げ、フラワーアレンジメントの制作、そして店頭での接客や配達まで、多忙な日々を送る花屋の皆様は、地域になくてはならない存在です。
しかし、日々の業務に追われる中で、「もっと集客を増やしたい」「新しい工夫をしたい」と考えながらも、どこから手をつけていいのか分からずに一人で悩む瞬間もあるのではないでしょうか。
春日井で6年、カーリースをやってきた。ある時期、自分の店で集客が止まった。広告費を倍、3倍、5倍にしても、お客様は増えなかった。「やり方が悪いのか、商品が悪いのか」を一人で考え続けた。
(公式HP「はじめに」より)
こうした手探りの時期を経て、私は「自分自身の知識や経験を整理し、それをどうやってお客様に伝えるか」という根本的なプロセスの重要性に気づきました。近年、注目を集めているAIという技術も、このプロセスを助けるための道具に過ぎません。
AIは能力の増幅器です。使う人の業種知識・経験・判断がないと、最大限には使えません。能力ゼロに掛けても、ゼロのままです。
(代表 佐藤の考え)
つまり、あなたがこれまでの商いで培ってきた「この季節にはどの花が長持ちするか」「お見舞いにはどんな色合いが好まれるか」といったプロセスの知識や経験こそが主役であり、AIはその主役の力を大きく引き出すための黒衣なのです。
では、なぜ今、多くの地域密着型の店舗でAIの導入が進まないのでしょうか。そこには共通する背景があります。
中小企業基盤整備機構が実施した「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月・有効回答1,668社)によると、中小企業のAI導入率は20.4%(全社的3.6%+一部業務16.8%)にとどまり、「導入予定はない」と回答した企業は61.0%に達しています。
この「導入予定はない」と答えた層が踏み切れない理由として、「現状で満足しており必要性を感じない」という回答が27.7%(検討中層では4.0%、出典は同上)を占めています。日々の商いが回っているからこそ、新しい技術の必要性を感じにくいのは自然なことです。
さらに、総務省が公表した「令和7年版 情報通信白書」の図表I-1-2-15(日本 n=515)によると、「効果的な活用方法がわからない」と答えた割合は、米国が9.7%であるのに対し、日本は30.1%にのぼります。多くの経営者が、AIという道具を自分の商売にどう結びつければいいのか、その具体的なイメージを持てずにいるのが現状です。
そこで、まずは花屋におけるAI活用の位置づけを明確に定義してみましょう。
花屋におけるAI活用とは
花屋におけるAI活用とは、店主が長年培ってきた「花の種類や扱い方に関する知識」や「地域顧客の好みの傾向」という無形の財産を言語化し、デジタル上のアシスタントに学習させることで、店頭POPのキャッチコピー作成やお礼状の文面作成といった具体的な事務作業を共同で行うプロセスを指します。
これは、決してロボットに接客を任せることでも、花の仕入れをすべて機械に自動化させることでもありません。あなたの頭の中にある「こだわり」を、効率よく形にするための共同作業です。
多くの人が「どのAIツールを使えばいいのか」「ChatGPTをどう操作すればいいのか」という道具の選定から始めてしまいます。しかし、それは順番が逆です。道具を触る前に、やるべきことがあります。
最初の1歩として、今日できることは「自分が日々行っている作業の中で、言葉にするのが面倒な業務を1つだけ書き出すこと」です。
例えば、以下のような作業はありませんか。
- お見舞い用の花束に添える、相手の気持ちに配慮したメッセージカードの文面作成
- 開店祝いのスタンド花を注文してくれた地域の法人顧客へ送る、丁寧なお礼メールの執筆
- 春の卒業・入学シーズンに向けた、小中学生向けのミニブーケを紹介する店頭黒板POPのキャッチコピー考案
- 季節の切り花を長持ちさせるための「お手入れ方法」をまとめた、購入客に渡す小さなお知らせ用紙の文章作成
これらはすべて、あなたの頭の中にある「花の知識」や「顧客への思いやり」を、具体的な「言葉」にする作業です。こうした「書くのに少し時間がかかる、億劫だ」と感じる作業を、まずはノートに1つだけ書き出してみてください。
道具の紹介や操作方法を覚えるのは、その次の段階です。まずは「どの作業をAIと一緒にやりたいか」という目的を明確にすること。この順番を守ることこそが、無理なく、そして確実に新しい一歩を踏み出すための鍵となります。
春日井市の9,833の事業所(出典:総務省統計局「令和6年経済センサス‐基礎調査」確報・雇用者のいない個人経営の事業所を除く)の仲間として、地元の花屋がその独自の魅力や専門知識をより多くのお客様に届けられるよう、まずは今日、身近な「言葉の作業」の棚卸しから始めてみてはいかがでしょうか。
出典
本文中の数字は、次の公的統計にもとづいています。
- 総務省統計局「令和6年経済センサス‐基礎調査」確報(雇用者のいない個人経営の事業所を除く)
www.stat.go.jp で見る - 中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月(有効回答1,668社)
www.smrj.go.jp の報告書(PDF) - 総務省「令和7年版 情報通信白書」図表I-1-2-15(日本 n=515)
www.soumu.go.jp で見る